斑鳩の秋

斑鳩の里に佇んでいつも思う。

取り立てて仏教に興味があるわけではないが、幾度訪れても、三塔が佇立し千数百年の歴史が醸す穏やかな余情ともいえる情景は忘れることはない。

今回数年ぶりに訪れてみた。
色づく柿や秋桜がやわらかな陽を浴びて、里山が点在する斑鳩の里に秋が訪れる。

そして夕映えが空を茜色に染めるころ、冷え込んだ空気が凛と張詰め、人の途絶えた里はいっそう静寂に包まれて夜の帳へと歩みを早める。

こんな昼と夜の挟間が堪らない。
だからここを訪れると、天平人も彷徨ったであろう落日の時間帯までいるのである。

デジブック 23景
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