大正の灯

お袋が「親より先に死んではイケない」
それが一番の親不幸だと常々の口癖だった。

その日、妹とケア―ハウスに様子を看に行った。

「母さん、俺誰だか判るか?」
大きく2度3度うなずく。
「茶碗蒸し食べる?」
うなずき、2口食べた。

帰り際、妹に此れなら今年一杯は大丈夫かも?
妹も納得の様子だった。

その夜、急転直下で逝ってしまった。

何も、そんなに急がなくても・・・(絶句)


振り返れば、お袋には親孝行らしき事が
何も出来なかった。

「親より先に死んではイケない」
唯一この教えだけは守ったぞ、母さん。

親は何時までも元気なものと思っていた。