銀白のカトラリー「燕人の匠」


 頭上にて力をぬけり夕燕  黒田櫻の園

  風に乗つて軽くのし行く燕かな  夏目漱石 明治二十七年

  風探る白帆へぴしと夏燕  金箱戈止夫

  飛び交へる矢とも屋島の夏燕  伊東とみ子

 山びこの真つすぐ来たる夏つばめ  酒井敏子

 山頂ヘ二手にわかれ夏つばめ  土生重次

 飛び溜る燕の声を打あふぎ  中村草田男

 飛び返し来る燕あり我は行く  森田峠 避暑散歩

  飛ぶ燕穹のまろさをあやしまず  林原耒井 蜩

  飼屋の灯ともりて燕なほ渓に  米沢吾亦紅 童顔

  首途の日に見初めたる燕かな  子規句集 虚子・碧梧桐選