如月の秩父山麓

裸になった欅の木々を後にして
言葉なく立ち去った
色濃く刻み込んだ
夕刻の冬の景色は
琥珀色にしてただただ郷愁と
寛容のみが交錯している

此処にもあった出会いと別れの冬
熱く流れた葉脈の息吹きは
再び燃えることもなく
北の風と共に消滅していく
最後の一枚が重く落ちた
友との日々が走馬灯のようによぎる

次なる大樹に生命を与える事実に
喜びと寂寥の交わる渦の中にて
一片の落陽は土となり大地に眠る
明日の陽が昇るころには
一層高きものに転じて人知れず
高貴の喜びと満足を味わう事であろう


友の一回忌に秩父山麓を訪れ、
花を手向け線香をあげてきました。