お点前

 調理師だった30代。仕事に生かそうとお茶の教室に通い始めた。「料理をするのにお茶やお花を学んでおいたら役に立つぞ」先輩からの助言に従ったのだ。
田舎で生まれ育ち、実家で栽培していた茶葉を加工したもの、つまり番茶しか知らなかったわたし。抹茶との出会いは驚きである。お茶を点てる作法があることも新鮮だった。
教えられた通り、表千家のお点前でたてた抹茶は、番茶の味とは格段の差で、濃厚さと上品さを同時に味わった。
 初釜、茶懐石なども体験、なんと着物まで買い揃えた。お茶の世界は田舎者の私に人生観さえ変えさせた。ただ教室に通う生徒さんはうら若い女性ばかり、黒一点の