ミッション・インポッシブル

 芦辺拓の「大江戸奇巌城」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書は伝奇時代小説であり、徳川12代将軍家慶の治世で、妄想に憑りつかれて世界征服を目指す一味の陰謀と対決する五人の少女の姿を描いた作品である。本書は二部構成であり、第一部では少女達の生い立ちが、第二部では少女達が陰謀に立ち向かう姿が描かれている。
 ちせは、九戸南部家の兵学教授兼本草方兼書物調役で、学問の便利屋、よろず知恵貸し所と言われる江波戸鳩里斎の娘である。彼女は奇行で知られる父親の下で、幼い頃から書物に囲まれて暮らして