天下の名刀

 青山文平の「白樫の樹の下で」を読了した。著者は時代小説作家であり、2011年、著者が53歳の時に「白樫の樹の下で」で第18回松本清張賞を受賞して再デビューし、史上二番目の67歳で2016年第154回直木賞を受賞している。本書は松本清張賞受賞作で、江戸を騒がす辻斬り事件に巻き込まれた貧乏御家人の姿を描いた時代ミステリーである。
 物語の舞台は田沼意次が失脚し、松平定信が老中首座に登った寛政時代の江戸の街である。主人公で二十三歳の村上登とその友人の仁志兵輔、青木昇平の三人は、本所南割下水の小普請組の貧乏御家人の息子であるが、深川常磐町の不釈流佐和山道場で