花の色は

 高樹のぶ子の「百夜-小説小野小町-」を読了した。著者は芥川賞作家であるが、ミステリーなど、幅広い分野の作品を手掛けている。本書は、平安時代前期の歌人で六歌仙の一人で、世界三大美女の一人に挙げられている小野小町の生涯を小説化した作品である。
 小野小町は生没年を初めとし、その生涯のほとんどは不明である。彼女は一般には参議小野篁の孫と言われているが、篁の娘であるとの説もあり、本書では篁の娘説の立場を取っている。本書は仁明天皇の崩御に伴い、彼女が三十一歳で山科に隠棲する前後で、前篇「花の色は」と後編「我が身世にふる」の二部に別れている。本書は全体で四十八章