仇討ちかあだ討ちか

 永井紗耶子の「木挽町のあだ討ち」を読了した。著者は時代小説作家で、2010年に「絡繰り心中」で第11回小学館文庫小説賞を受賞して作家デビューし、2023年に本書で第169回直木三十五賞と第36回山本周五郎賞を受賞している。本書は、謎の若武者が関係者にインタビューすることにより、二年前に木挽町の芝居小屋の前で起こったあだ討ちの真相を明らかにするという形式を取っている。
 第一章「芝居茶屋の場」:木挽町の木戸芸者の一八は若侍に芝居茶屋に招かれ、二年前に森田座の前で起こった仇討ちの話をする。その若侍は仇討ちをを成し遂げた伊能菊之助の縁者であると言い、菊之助