ふくちゃ。


稜線(りょうせん)あざやかな山郷で幼少期を過ごした
私の楽しみは平凡な生活の中のサプライズだった。

ある夏の夜 蚊帳(かや)に外から飛び込んだ ふくろう
が絡(から)まった。
まだ幼く親からはぐれて迷い込んだのであろう。
それから私の過ごし方が一変した。

もはや学校はそぞろとなり籠(かご)を作り 餌(えさ)の
与え方など 調べ物とともに 一心不乱の世話をした。

「ふくちゃ」と名付けたものの気高いせいか何も口に
しない。

次第に私の愛情が通じたか鳥のささ身など食べるように
なった。
餌を与えるさいに名前を繰り返した。
慣れてくると呼びかけに応じ