全身麻酔下での難手術

 青山文平の「父がしたこと」を読了した。著者は時代小説作家であり、2011年、著者が53歳の時に「白樫の樹の下で」で第18回松本清張賞を受賞して再デビューし、史上二番目の67歳で2016年第154回直木賞を受賞している。本書は、譜代の小藩の藩主の疾病の手術を、蘭方の外科医に委ねたことにより起こった悲劇を描いた時代小説である。
 物語の舞台は天保十三年(1842年)のとある譜代の小藩で、視点人物は目付で二十八歳の永井重彰である。ある日重彰は小納戸頭取の父親の元重から、藩主の身体に関する秘密を打ち明けられる。小納戸頭取とは藩主の身辺御用を取り仕切る責任者であ