青山文平 の 「父がしたこと」

★3.5 老中を出せる譜代藩に於いて、筆頭家臣の家に生まれた親子と藩主の蘭方手術を交えて、華岡青洲以後の日本の麻酔手術の歩みを描く。

父の永井元重は小納戸頭取を務め子の重彰は目付の職にある。藩内には庶民に人気の蘭方医・向坂清庵(さきさかせいあん)が尚理堂という診療所を開いている。だが、藩内の文化を先取りする名主らにはまだ蛮医と見下されていた。

文化元年(1804年)華岡青洲が麻沸湯(まふつとう)による全身麻酔下で初めての乳岩手術を実施した。青洲を継承し発展させたのが本間棗軒(そうけん)である。向坂清庵はこの本間棗軒の高弟(創作のよう)である。