『殺意』④


小夜子は白分のバス代だけを残して あとの五千七百円を
佐多に持たせた。

そして佐多を 下田行きの直通バスに乗せた。

乗るまでひとことも言わなかったがバスが滑りだすまで
曇った窓を通して小夜子を追っていた。

バスが出てしまうと 小夜子は駅の裏手の郊外の方へと
歩いて行った。

写貞が新聞にでるくらいだから 白分が佐多と一緒に逃
げたことも判っているに違いない。

新聞受けに留守のような細工をしたのが馬鹿馬鹿しく
思えた。

おそらく警察は 既に私と佐多を結びつけているだろう。

そうすれば自分が郷里へ立ち寄る事もよほど注意しない
と危い。

夜にな