小聖菓幼稚園より持ち帰る

 チロルの村抜ける聖菓を切るように  岡島禮子

 ナイフなほ聖菓の中に動きをり  山口波津女

 ひとひらの花瓣のごとく聖菓享く  立原修志

 小窓より覗く聖菓の家の中  辻田克巳

 水平を持して聖菓をもち帰る  池田秀水

 聖菓切るゆたかに底に刃が遠し  橋本美代子

 父と子にあまる聖菓や刃を入れて  渡辺千枝子

 チョコ懸けたケーキに聖夜なり  アロマ

 夜を更かす聖菓の花も星も食べ  津田清子

 九十有二歳の吾も聖菓欲る  阿波野青畝

 山は雪ならむ深々聖菓切る  百合山羽公 寒雁

 網棚のクリスマスケーキやや斜め  草間時彦