柳家小三治自伝「どこからお話ししましょうか」

小三治は枕が面白い。いや正確にいうと枕「も」面白いのだが、その枕だけを収録した「ま・く・ら」などの本も出ていて、それらも非常に面白い。

それで「自伝」と言ってもその延長で自分について語っているんだろうと思って読んだら、これが大違い。もちろん飾らずに自分を語るという意味では確かに小三治の「枕」なのだが、内容が実に深いのである。まさに人生論、芸術論なのだ。

どう深いのかを伝えるのは私の能力を超えているが、1番印象に残ったのは、役らしく声色を変えたりするのではなくその人間になり切れ、という話である。私は小三治の話がどこがすごいかというと、クマさんでもおかみ