『あの坂』

『行ってみたぜ』
『あたしは、まだ』
『じゃあ、今日、俺と行く?』
『今から?』
『そう、今から』
『起きたばかりだし』
『いいって、今から、迎えに行くから」
そう言って、もう、ケータイは切れてしまった。
あの坂の桜並木、まだ、あるんだ。 そう、あるよね。
桜は、毎年、咲くんだから。
でも、二人とも、あれから、一度も行ったことがなかった。遠い昔のような気がするけど、桜は、やはり、待っていてくれたのかもしれない。

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