蝦夷地の守護神

 高橋克彦の「噴怨鬼」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説を始め伝奇小説、時代小説等を手広く手掛けている。本書は「鬼」シリーズの最新作であり、史上最強の鬼である噴炎鬼の正体を暴くために、仲間達と陸奥国に向かった陰陽師陰陽師弓削是雄の活躍を描いた伝奇小説である。
 物語は仁和四年(888年)の暮の深夜に、検非違使庁別当(長官)小野春風が陰陽寮頭の弓削是雄の役宅を訪れる場面から始まる。是雄は安倍晴明を超える陰陽師と言われる人物であり、彼と春風は、二人が陸奥の鎮守府に赴任した時に知り合っている。是雄は広い役宅で、郎党の甲子丸、配下の紀温史、陸奥から連れて