きりぎしの満面に日や年歩む 岡本眸

　京焼に「喜」と「楽」の印年歩む 中嶋陽子

　夫ありしままの表札年歩む 　　青野安佐子

　年歩む子供のやうに見え隠れ 柳川晋

　ばらの実のまろまろとして年歩む 大橋敦子

　健やかに軽き足どり年歩む 　　船橋とし

　由比ヶ浜玲瓏と凪ぎ年歩む 　　田中貞雄

　改札口人あふれ出て年歩む 　　中山純子

　石炭を欲りつゝ都市の年歩む 　　竹下しづの女

　むらさきの葉牡丹買ふも年用意 　原田しずえ

　海苔だけは上物にして年用意 斉藤裕子

　斜交ひに断つ青竹