『万葉集』を訓(よ)む(その二千八十七)

 今回は、一七二〇番歌を訓む。題詞に「元仁歌三首」とあり、本歌〜一七二二番歌の三首は「元仁(ぐわんにん)の歌(うた)」である。「元仁」について、金井『萬葉集全注』は次のように注している。

 ○元仁 未詳。「元」は氏、「仁」は名で渡来系の人か(私注)、学者の漢風名か(全註釈)などの説があるが、僧侶名であろう。僧侶として類似の名が、元開(淡海三船)、元長、元観など、日本古代人名辞典に見える。

 写本の異同は、三句一字目<今>。『西本願寺本』はここを「今日」としており、これを原形と見る説もあるが、次点本系統いずれも「今」とあるので、それを採る。原文は次の通