『万葉集』を訓(よ)む(その二千百一)

 今回は、一七三四番歌を訓む。題詞に「少辨歌一首」とあり、本歌は、「少辨(せうべん)の歌(うた)」である。作者について、阿蘇『萬葉集全歌講義』は「小弁」として次のように記している。

 小弁 少弁(辨)とも。左右弁官の第三等官。正五位下相当。八省の事務を率いる弁官の定員は左右の大中少の計六名で、三等官である小弁は、左少弁は文事を、右少弁は武事を管掌した。巻三・三〇五の高市黒人の歌の左注にも、巻九・一七一九の春日老の歌の左注にも「或る本にいはく、少弁の作なり」と記す。本歌を小弁の作とするところから、黒人、老と同時期に活躍し、近江を通過する旅を共にしたもので