「乾緑郎」の日記一覧

会員以外にも公開

将軍綱吉の御殿医

 乾緑郎の「見返り検校」を読了した。著者は小説家、劇作家であるが、鍼灸専門学校を卒業しており、鍼灸師として働いた経歴を持っている。小説家としては朝日時代小説大賞、「このミステリーがすごい!」大賞等を受賞しており、テリトリーの広い作家である。本書は、「鍼聖」と称えられる杉山検校(杉山和一)が、実は別人が成りすました人物であったとの設定の、時代ノワールである。  物語は元禄六年(1693年)、とある…

会員以外にも公開

乾緑郎 の ねなしぐさ 平賀源内の殺人

★3.3 平賀源内の事績を中心に、最後は源内が起したとされる殺人事件の真相に迫って行く。登場人物は源内の他に、杉田玄白、前野良沢、工藤平助、田沼意次など。 佐野政言が田沼意知に斬りつけた事件で、動悸の1つは〈田沼家が系図改ざんのため借りた佐野家の系図を返さなかった〉とされるが、佐野はその系図が源内の手元にあるのではと思い込んだ。 実は、源内が保有していたのは工藤平助の〈赤蝦夷風説考〉の原稿で…

会員以外にも公開

乾緑郎 の 鬼と三日月 山中鹿之介、参る!

★3.4 尼子家の忠臣とされる山中鹿之介を軸に、忍び集団・飯母呂衆の末裔・鉢屋賀麻党の陰謀を絡ませたファンタジー。 かつて京を追われた飯母呂一族は関東で平将門に仕えるが、落ち延びて鉢屋衆と風魔衆とに分かれた。山陰地方へ移った鉢屋衆は芸能集団を隠れ蓑に京の朝廷打倒を悲願としていた。 小次郎(将門の幼名)と五月姫(将門の娘)を復活させ、小次郎に将門の魂を託身させるのだ。儀式には五月姫(阿国)に天…

会員以外にも公開

バナナフィッシュの夢

乾緑郎の「完全なる首長竜の日」を読了した。本書は、宝島社主催の『『このミステリーがすごい!』大賞』の第9回大賞受賞作である。著者は、鍼灸師として働きながら、劇作家や俳優活動を行っていた経歴を有するとのことである。  本書の主人公は、三十代後半の少女漫画家和淳美である。人気作家であった淳美は、15年続いた連載が突然打ち切られことになり、どことなく落ち着かない日々を送っている。淳美には、自殺未遂によ…

会員以外にも公開

若き日の石川五右衛門

乾緑郎の「忍び外伝」を読了した。著者の作品を読むのは、初めてである。図書館で借りるまで知らなかったが、著者は、鍼灸師兼劇作家で、小説デビュー作の本書で、朝日時代小説大賞を受賞しているとのことである。本書の内容は、伊賀の上忍・百地丹波によって育てられた石川文吾衛門(後の五右衛門?)の生い立ち、天正伊賀の乱での活躍、幻術師果心居士(実は観阿弥)との闘い等を描いたものである。  時代は本能寺の変の直後…