武家再興の夢
朝井まかての「秘密の花園」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、江戸随一の戯作者となりながらも、生家の滝沢家再興の夢を捨てきれなかった曲亭馬琴の一生を描いた評伝小説である。 物語は隠居した家の庭の花園を手入れしていた馬琴が、妊娠している息子の嫁の路に声を掛けながら、年上の妻の百の許に入り婿になった頃から過去までを回想する場面から始まる。その花園…
朝井まかての「秘密の花園」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、江戸随一の戯作者となりながらも、生家の滝沢家再興の夢を捨てきれなかった曲亭馬琴の一生を描いた評伝小説である。 物語は隠居した家の庭の花園を手入れしていた馬琴が、妊娠している息子の嫁の路に声を掛けながら、年上の妻の百の許に入り婿になった頃から過去までを回想する場面から始まる。その花園…
朝井まかての「朝星夜星」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、大阪初の洋式ホテルである自由亭ホテルを開業した草野丈吉と妻ゆきの半生を、妻の視点で描いた評伝小説である。 ゆきは肥後の貧乏百姓の家に生まれ、十二歳の春に長崎丸山町の傾城屋引田屋に奉公に出ている。ゆきは骨太であったため、祖母の反対により女郎ではなく、女中として奉公したが、齢とともに背…
朝井まかての「ボタニカ」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、日本植物学の父とも言われる、牧野富太郎の生涯を描いた評伝小説である。 本書の主人公の牧野富太郎は、文久二年に土佐国佐川村(現在の高知県高岡郡佐川町)で生まれる。実家は岸屋という屋号の造り酒屋兼商家で、村一番の富豪である。しかし、彼の両親は彼が幼い時に結核で亡くなっており、彼は祖父の後…
朝井まかての「白光」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、日本人初のイコン画家である山下りんの生涯を描いた評伝小説である。なお、イコン(聖像画)とは、イエス・キリスト(イイスス・ハリストス)、聖母マリヤ(生神女)、使徒、天使、聖書における重要出来事や喩話等を描いた画像であり、現在我々が無意識に使っているアイコンという言葉の語源でもある。 本書の…
朝井まかての「類-Louis-」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、森鷗外の「不肖の子」と終生言われ続けた、三男の森類の生涯を描いた伝記的小説である。なお、森鷗外には、先妻の登志子と間に生まれた長男の森於菟、後妻の志げとの間に生まれた長女の森茉莉、次女の小堀杏奴、夭折した次男の不律、と類の五人の子供がいるが、それぞれオットー、マリ、アンヌ、フリ…
1.実さえ花さえ (2008.10) https://smcb.jp/diaries/4523105 2.ちゃんちゃら (2010.9) https://smcb.jp/diaries/4614653 3.すかたん (2012.01) https://smcb.jp/diaries/4753462 4.先生のお庭番 (2012.08) https://smcb.jp/diarie…
朝井まかての「輪舞曲(ロンド)」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、夫と息子を捨てて27歳で単身上京し、大正後期から昭和初期に新劇を代表する女優になりながらも、数え年40歳を目前に、満38歳で亡くなった伝説の名女優伊澤蘭奢(本名:三浦繁)の半生を、彼女を取り巻いた男達の眼で描いた伝記的小説である。 物語は蘭奢が亡くなった直後、彼女の愛人であり…
朝井まかての「グッドバイ」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、幕末から明治にかけての長崎三大女傑の一人である大浦慶の半生を描いた歴史小説である。 長崎の油商大浦屋の女主お希以(けい、後に慶と改める)は、文政11年(1828年)、家付き娘の佐恵と入り婿の大浦太平次との次女として生まれるが、太平次夫婦に男児が生まれなかったため、総領娘として育てら…
朝井まかての「落花狼藉」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説をテリトリーとしている。本書は、江戸時代初期の、傾城町の吉原の誕生から浅草田圃への移転までの歴史を、遊女屋の西田屋の女将の花仍(かよ)の目から描いた時代小説である。 物語は徳川家康が薨去した翌年の元和3年(1617年)に始まる。主人公の花仍は、日本橋の近くにある傾城町吉原にある西田屋の女将であるが、二十三歳と若く、見世の者達…
朝井まかての「草々不一」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説をテリトリーとしている。本書は、主として武士の人生の哀切を描いた時代小説の短編集である。 「紛者」:佐竹信次郎は兄の不祥事のために、武士の風上にもおけない紛い者と嘲られ、養子に入った婚家から離縁されたために、脱藩する。流れ着いた江戸で信次郎は、深川芸者ではあるが超肥満体で年上のふくに食わせて貰っている。その新次郎が、複数の武…