「出久根達郎」の日記一覧

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出久根達郎 の 花のなごり -奈良奉行・川路聖謨-

★3.5 桜奉行の続編。川路の日記が欠落していたこともあり、今回は取り留めのないような内容で期待外れで残念。 まとまった量をなす、仙石騒動の回顧譚もよくわからない。どこの藩にもありそうな藩内の権力闘争のようだが、なぜ幕府の介入する評定所扱いの事件となってしまったのか。川路の出世の糸口となった事件だけに興味深い内容ではあるのだが。 藩の財政改革に取り組もうとする筆頭家老の仙石左京の専横に反発し…

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出久根達郎 の 猫も杓子も猫かぶり

★3.3 シリーズ3作目。 今回は大奥で将軍家斉を猫を使って毒殺しようと図る何者かが。それを察知した中臈と下女、市中に逃れその猫を探す。 猫の似づら絵師の銀太郎はその似顔絵を描いたことで事件に巻き込まれる。 大奥のしくみ、町方の仕事、江戸を出るための手続きなどこの作者得意の蘊蓄も各所に登場。江戸のごみ処理の仕組み、特に長屋や武家から出るごみ、芥舟での回収と深川沖の埋め立て事業などは興味深い…

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出久根達郎 の 御留山(おとめやま)騒乱

★3.3 天保年間の信濃国が舞台の伝奇風娯楽作。 国家老から松茸と山茗荷の横流し探索を命じられた嵐と平助は、寺から逃げ出した秀全とともに御留山の秘密に巻き込まれてしまう。 御留山は藩主直轄の山で、将軍に献上する氷柱花や珍しい花を作るところ。そこは御山奉行らのある企みの場所でもあった。 蝮をあやつる山女・まつ、村を逃散し山に住む山上がり衆なども登場し怪しげな挙動が・・。作者の得意とする薬草や…

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出久根達郎 の 御書物同心日記 虫姫

★3.5  シリーズ3作目。7つの連作短編。 紅葉山文庫の巻物の表装職人の物語、「奇竹譜」という本の市中での探書、せ取師という古本屋や蒐集家に仲介する商売、平川御門の不浄門櫓に保管された犯罪者の蔵書、「鳴虫譜」という本に興味を示す幼い娘・虫姫、亀戸天神の鷽替と喜助の娘・おしんの縁談、深川洲崎での潮干狩りと古本屋・浅甲屋の次男などに関する物語。 なぜこのシリーズが3作で中断したのだろうか。古本…

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出久根達郎 の 続 御書物同心日記

★3.5 シリーズ2作目。60余日もかかる御風干(本の虫干)も天候に左右される。紅葉山文庫ではさすがに大きな事件はない。御風干と同心21人の甲乙組変えぐらいのもの、大奥の持ち主か灰姫と名付けた金目銀目の猫が話題になったりする。 物語は古本屋での稀覯本や珍本にまつわるものが多い。「御文庫所蔵目録」「将軍の愛読書(手沢本)の巾箱本」「浮かれ調子」「文正草子という奈良絵本」「奇眼百図」などが取り上げ…

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出久根達郎 の 御書物同心日記

★3.7 シリーズ初作。こちらは江戸城紅葉山文庫に勤める同心の物語、時代は天保3年(1832年)のころ。 家康が集めた蔵書をはじめとして歴代の将軍の蔵書を保管、管理するところ。 一度も火災に会うことなく現在に伝えられているのは驚異的。その中に「御書物方日記」なるものが150年間(1706-1857)分残っている。 書物奉行が毎日残した業務日記である。作者はこれをもとに物語を創作したのだ。 …

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出久根達郎の「土龍(もぐら)」。

★3.5 時代は幕末、嘉永年間。水野忠邦や鳥居耀蔵が失脚後の時代である。 南町の定廻り同心株を買って養子に入ろうとした若者に闇の世界を暗躍する勢力が・・。 お台場築造中に起きる井戸掘削事故、江戸市中の商家の穴蔵築造の騒動。江戸城周辺に延びる地下道。いずれも世間では土龍と呼ばれる穴掘り職人が絡んでいる。 彼らを操る影の首領の狙いは・・。頻発する地震や、大量の鼠や土龍、赤虫と呼ばれる謎の生き物…

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出久根達郎の「桜奉行  幕末奈良を再生した男 川路聖謨」。

★3.8 久しぶりの楽しい本。幕末の官僚・川路聖謨(としあきら)の奈良奉行時代を描く。 足かけ6年の奈良時代、江戸に残した実母宛てに、近況報告代りに送った日記(寧府紀事)がもとになっている。 赴任から6ケ月余を扱っており、母親を楽しませようとてか(どこまでがフィクションかわからない)面白い話が続く。 配下の役人や奈良の町民が奉行の行動をどのように見るかを常に意識している点も興味深い。 白…