『万葉集』を訓(よ)む(その二千百四)

 今回は、一七三七番歌を訓む。題詞に「兵部川原歌一首」とあり、本歌は、「兵部(ひやうぶ)の川原(かはら)の歌(うた)」である。作者の「兵部(ひやうぶ)の川原(かはら)」について、金井『萬葉集全注』は「○兵部の川原 兵部省に勤めている川原を氏の名とする人物をいうのであろう。この歌の作者に適合する人物は見出せないが、川原氏は大化五年条に野中川原史満があり、集中には川原虫麻呂(防人、20・四三四〇)がある。神亀二年(七二五)条に川原椋人(くらひと)(子虫)ら四十六人に河原史賜姓の記事が見える(続紀)。姓氏録によれば河内国居住の渡来系氏族である。」と記す。
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