『万葉集』を訓(よ)む(その二千百五)

 今回は、一七三八番歌を訓む。題詞に「詠上総末珠名娘子一首[并短歌]」とある。これを訓読すると「上総(かみつふさ)の末(すゑ)の珠名娘子(たまなをとめ)を詠(よ)む一首(しゆ)[并(あは)せて短歌(たんか)]」となる。本歌は、二十九句からなる長歌で、反歌一首(一七三九番歌)を伴う。
 「上総」について、阿蘇『萬葉集全歌講義』は次のように述べている。

 上総(かみつふさ) 千葉県南部。古くは広く総国(フサノクニ)と称した。良い麻がとれたから、麻(ふさ)の国と言ったと古語拾遺にいう。上総と下総とに分れた。古い東海道は、相模国の三浦半島から浦賀水道を渡って房